八名信夫の うまいもん紀行


【越乃寒梅】は粋な大人の味

酒を幾つの時に覚えたか?
と言うより、
酒の飲み方、粋な大人の飲み方を、いつ覚えたか?

俺の場合は、プロ野球時代の20代前半
生意気にも、銀座の『うさぎ』や『げん』で遊んでいた頃かな?
銀座は、財界芸能文化界の一流の大人たちの交流の場だった。
その大人たちが、俺たち若造に《遊び》を手ほどきしてくれた。

『酒』の編集長、佐々木久子さんも、その一人だった。
広島の、はっきり物を言う女性だったが、
いつも気にかけてくれていた。
「ね、八名ちゃん、新潟に花見に行かない?
ついでに、ちょっと講演して」
20年前になるかな?
一緒に行って、驚いた。
『酒』の編集長だけあって、新潟県の『酒』関係のそうそうたる方々が
集まった。
そして、二次会は、一流料亭で、一流どころの芸者さんたちを集めて、
洒落た遊び。
外は満開の桜!
「八名ちゃん、こういう一流の遊び、酒の飲み方を
しなきゃ駄目よ」
チャコちゃんお姐は、機嫌良く教えてくれた。

その席で出会ったのが、当時《幻の銘酒》と呼ばれていて
なかなか手に入らなかった【越乃寒梅】
まあ、そのうまいことと言ったら!!
そして【越乃寒梅】の会長さんとも、一緒に花見をさせてもらった。

チャコちゃんお姐は、テレビの辛口トークで人気者になったが
スパッとテレビから姿を消して
亡くなった。

会長さんは、新潟の花見の夜から、忘れずに【越乃寒梅】を贈って下さる。
先日は「俳優生活54年 おめでとう」と、
美しい花と、【越乃寒梅】を届けて下さった。

流石、幻の銘酒と讃えられる銘酒を造る方は違う。
54年間こつこつと積み上げて来たこの道を
分かって下さる方だ。
チャコちゃんお姐が、会長さんを俺に紹介してくれた理由が分かった。

「八名ちゃん、大事な方への礼状は、自分で書くものよ」
と、佐々木久子お姐の声が聞こえてくるような気がする。


※『うさぎ』は、中村勘三郎さんのお母さんが経営していた店で、
銀座でも一流所。
プロ野球の若造の俺たちが遊べる店ではなかったのに、
何故か可愛がってくれた。
先代勘三郎さんとのエピソードは『げん』で紹介。


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