八名信夫の うまいもん紀行
季節を映して。和菓子 伊豆 石舟庵 |
ゴッドファーザーのような大親分がいて。
ファミリー(家族)や組織を守る為なら、どんなことでもやってくれる。
一生懸命に真面目に生きて働いていても、恵まれない人たちの為に、
力を貸してくれる「ゴッドファーザー」。
そういう大親分の役をやってみたいなと思うことがある。
誰にも恐れられているゴッドファーザー。
だが、その親分は、何故か「3時のおやつの時間」だけは、きっちり守る。
3時になると、テレビを観ながら体操をやって、
そこへ、子分がお茶と和菓子をスッと出す。 格好良く。
和菓子は、伊豆の石舟庵(せきしゅうあん)のもの。
春は、石舟庵の道明寺の桜餅。
薄く桜色に染まった道明寺。
少し塩味をきかせた桜の葉と、中のあんこの上品な甘さが丁度良い。
親分は、どちらかというと、道明寺の桜餅派だ。
この桜餅は、伊豆高原の桜並木を思わせる。
伊豆高原駅から一碧湖へ連なるバス通りに、見事に花咲かせる桜並木。
満開の桜を眺めると、誰もが最高の笑顔をみせてくれる。
あの笑顔までをも映しているような、可愛い道明寺の桜餅だ。
夏は、水羊羹。
石舟庵の水羊羹は、透明な小さなカップに入っていて、
甘過ぎず、固過ぎず
のどごしの柔らかな甘味が、実に風味豊か。
季節を先取りしたかのように、少し早めに店先に並ぶと、
ああ、もう水羊羹の季節なんだと、木陰の伊豆の夏を思い出す。
ただし「今日のものは、今日中にお召しあがり下さいネ」と
店員さんに言われる。
おいしいものは、おいしいうちに。
賞味期限にこだわるのも、造り手の愛情だ。
麩まんじゅうもおいしい。
つやつやの笹の葉に、生麩のまんじゅう。
冷やしてパクッと食べたら、なんとうまいことか!
石舟庵は、あんこが良い。
ちょっとネチャ、ポクっという生麩に、すっと溶け込む甘さ。
店先の小さな竹のザルに、好きな和菓子を選んで買うようになっていて、
水羊羹は1つ、麩まんじゅうは1つ
医者が「親分は、糖尿病ではありませんが、用心を。
塩分と甘い物を取りすぎないように」と
ときどきうるさく言うから。
でも、石舟庵の和菓子は別腹だ。
なあんて思いながら、店先にいる親分。
表に、黒塗りのべンツなんか停めて。
ああ、これも面白い映像かも知れないナ。
〜石舟庵の秋〜
おさつさん・天城山・富士の大地
石舟庵(湯川本店)
〒414-0002 伊東市湯川4-13-1
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