八名信夫の うまいもん紀行
昭和のなごり町で出会った おくゆかしさ くらや 衆楽雅藻(津山市) |
幼い頃の子守歌は、蒸気機関車の汽笛だった。
ポーッという、物悲しい汽笛。ガタンゴトンガタンゴトンという
汽車が走って行く音。枕元に、いつもその音があった。
父親が国鉄津山駅の駅員だったので、
3歳から5歳頃迄、俺の遊び場は、津山駅の構内だった。
昨年春、仕事で出掛けて、津山駅に降り立った時、
駅を出て、広い川を渡る。
津山は、岡山県と鳥取県を結ぶ主要都市。 |
静岡県・大井川鐵道にて(アサヒ芸能 守屋要氏提供) |
そんな昭和初期の町並みを、街の人たちが遺している場所がある。 懐かしい家々の様子に、思わず足もゆっくりになる。 格子戸を開けて、一軒の民家に入ってみる。 |
黒光りした階段を上がって行くと、展示会が開かれていた。
90歳の地元の男性が、竹を焼いて行灯や箸、洒落た生活品をつくり、展示していた。
地元の女性たちが、ボランティアで手伝いをしている。
1階は喫茶室。
昭和初期の洋館。懐かしい家具や思い出の品々が並んでいる。
丁寧にいれられたアイスコーヒー。
大きなテーブルに座って、庭を眺めながら町の人たちと飲む。
良い風が入って来る。
「津山をもっと魅力的な街に。
津山でなければ出来ないことを。経済的にも元気のある街に!」
と、若い皆さんが頑張っている。
株式会社マルイの松田欣也社長。
「一番新鮮で、おいしく安い魚、肉、野菜を。
津山の皆さんが、笑顔で喜んで下さるように。それが最高の儲けです」
住宅地を中心に、街のあちこちでみかけるマルイのスーパーは
どこも家族連れで賑わっていた。
地域のお客様の目線に合わせた品揃え。
出来たての惣菜もうまそうで。俺もついさつま芋の天ぷらを買ってしまった。
松田さんの仲間は“子供たちを大人が愛情を持って守って
育てていかなければ”という活動も熱心に続けている。
(実は、その活動の一環で、俺も松田さんと出会った)
株式会社マルイ
〒708-8505 岡山県津山市戸島893-15(本部)
0868-28-8111
http://www.maruilife.co.jp/
その仲間の一人が“くらや”の稲葉伸次さんだ。 松田さんもそうだが、稲葉さんも良い顔をしている。 (悪役の俺が言うのだから、本当だ) 前に向かって何かをしようとしている人には、輝きがある。 “くらや”は和菓子屋。 遠くからいらしたお客様も、ゆっくり和菓子を楽しめるようにと、 くつろぎのコーナーもあって、 和菓子を通してのふれあいを大切に考えている。 俺は、わらび餅を食べた。うまい! 吉野の葛をつかって、こだわってつくっているそうだが、 ツルッとのどごしが実に良い。 思わず、土産に一箱買ってしまった。 |
“くらや”の【衆楽雅藻】という和菓子も、 城下町津山らしい上品なひとしなだ。 羽二重餅。あんは、白味噌に梅の果肉を混ぜて、 白あんにして、羽二重餅に包んでいる。 姿形も味も、品が良い。 津山藩の殿様が造った庭園“衆楽園”をも連想させる。 “くらや”の本店以外にも、津山にしか置いていないという こだわりも稲葉さんらしい。 全国の友達に贈ったら「お前らしくない、品の良い菓子だな」 とみんなに喜ばれた。 |
くらや
〒708-0824 岡山県津山市沼77-7
0868-22-3181
http://www.kuraya.jp/
【メモ】
津山へは、岡山駅からJR津山線で、山や川を眺め、季節を楽しみながら出掛けるのも良い。
最近は、土日祭日ともなると、若い人たちや家族連れで賑わっているそうだ。
自転車を借りて、“津山駅”から“懐かしい昭和の町並み”“衆楽園”“津山城址公園”、
それから“稲葉浩志君の小中学校や高校”“生家”“お兄さんの店【くらや】”を訪ねるコース。
俺も知らなかったが、B'zの稲葉浩志君は、すごい人気なんだなあ。
たしかに、大阪の友人に【衆楽雅藻】を持って行った時、そこの従業員の娘が
「あ、私もこの前【くらや】へ行って来ました」って話していた。
今、津山では『懐かしの鉄道展示室』が開かれているそうだ(11月24日迄)。
旧津山扇形機関車庫(1936年建設・親父のいた頃だ!)
日本に1台しかない『DE501』『DD51』など貴重な鉄道文化遺産がある。
詳しいことは、 懐かしの鉄道展示室見学係 086-225-1179へ
津山市役所
http://www.city.tsuyama.okayama.jp/