八名信夫の うまいもん紀行
イルカと助け合って 民宿 イルカ館(天草) |
「魚がおいしくて、安くて、親切な民宿へ行きませんか?
天草の海は綺麗で、イルカも観られますよ」
熊本放送で『八名信夫の悪役は口に苦し』、
毎週日曜日の夕方、十年も続けていた番組で、
ディレクターのN氏に誘われて、取材に出掛けた。
福岡から小さい飛行機に乗り換えて。
低く飛んで行く。
これが素晴らしかった。
コバルトブルーの海に、小さな島がポツンポツンと浮かんでいて、
まるで箱庭のように、美しい!
そして、空港から車で15分。
【民宿イルカ館】は、天草の海の真ん前。
「ふるさとに帰って来たみたいだって、皆さん、おっしゃるんです。
ここは自然が自然のままにありますからね」と女将さんの木口照子さん。
「夕日も、月も、星も。きれいですよ」
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「魚は、目の前の湾から漁師さんが獲って来たのを、生け簀に入れて
お客様がお風呂に行かれた時、料理するんです。
天草は、うに、あわび、伊勢海老。
うちは、『天然鯛の塩釜焼き』も自慢ですよ。
特にお義兄さんが創っている『通詞島の天然塩』が
鯛をおいしくするんです」
【民宿イルカ館】では、イルカウォッチングも出来る。
ご主人が船を出して、イルカを観に案内してくれるのだ。
「皆さんが『イルカを観たい』と思って出掛けるでしょ?
そうすると、イルカも『誰が来たのかナア?』と、興味津々。
船が近付いて行くと、イルカは、その波に乗ったりして
遊びに来るんです。
イルカと目が合ったって、涙を流して喜ぶ人もいます」
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木口さんのイルカウォッチングは、イルカを観るだけ。
触ったり、餌をやったりしない。
普段のままのイルカの生活を観てもらいたいと言う。
「天草の人たちとイルカは、昔から一緒に暮らして来ています。
漁師さんは、イルカに魚のたくさんいる場所を教えてもらう。
もぐる人は、イルカが大きな魚を岩に追い込んでくれるのを捕まえた。
イルカも、この湾の中で安心して暮らしている。
イルカの寿命は40年から60年。
この湾に、300頭くらいが上手に世代交代して
天草の人たちと暮らしています」
【イルカ館】には、手紙やイルカの絵がずらっと並んでいる。
全国の子供から大人まで、たくさんの人たちからの礼状だ。
「私もイルカに教わったことがあるんです。
ある時、イルカの赤ちゃんが死んだのに、
お母さんイルカが、赤ちゃんを鼻の上にのせて、
1週間くらい泳いでいて、
それを仲間のイルカたちが、群れになって、守っていた。
家族愛とか、仲間へのおもいやり、
いろんなことを教わりました」と木口さん。
助けて、思いやって、教わって。
そうなんだよなあ。