八名信夫の うまいもん紀行


愛知へ行ったら 俺も人気者?
八名丸くん(愛知県一鍬田地区)

去年、講演で愛知県の新城市へ行った時、
「八名さん、この辺に『八名丸くん』っていう里芋があるんですけど、ご存じですか?」
と、会う人会う人に言われた。
「『八名丸君』? 僕と同じ名前ですね。僕に似てますか?」
「ええ、もうそっくりですよ。大きくて、実がしっかり詰まって、
味が良い。煮付けでも、味噌汁に入れても、最高です。
昔から人気があります」
「ああ、それじゃあ、僕にそっくりですね」
そう言うと、みなさん大笑いしながら、『八名丸くん』をお土産に下さった。

『八名丸くん』なんて、なんだか、
自分のことを可愛らしく呼んで貰ったようで、
ちょっと照れ臭い感じがした。
しかし、この『八名丸くん』、見たことのないような立派な里芋で、
大きいし、料理がしやすい。
普通、里芋はよく洗って泥を落としてから、皮をむく。
それでも泥が残っていて、何遍も洗わなければならないが、
この『八名丸くん』は、皮がむきやすい。
汚れが残りにくく、白い実がきれいに出て来る。
里芋独特のぬめりも、『八名丸くん』は、
それほど手がかからずに、上手に煮ることが出来た。
そして、うまい! 大きいのに、柔らかくて、もっちりとしたうまさがある。
こんなにうまい里芋を食べたのは、初めてだ。
『八名丸くん』とは、お前も良い名前をつけて貰ったナ。俺と同じ名前だぞ。
などと、ふっと芋に呼び掛けたくなってしまった。

うちのおふくろは、煮物が上手で、俺が岡山に帰ると、
いつも野菜の煮付けを作って待っていてくれた。
おふくろは一昨年亡くなったけれど、『八名丸くん』をみせたら
なんて言ったろうなあ。
「愛知県の東の方に、八名郡八名村って言う所があってナ、
そこは、豊川を中心に野菜や芋づくりにぴったりな土地だったんだ。
そこでつくっていた里芋だから、昔から“八名丸里芋”と呼ばれて人気があったそうだ。
平成14年愛知県の伝統野菜に選ばれた時、『八名丸くん』と商標登録されたんだって。
『八名丸くん』だぞ」
「まあ、うちを食べるみたいで、面白いわね」なんて言いながら、
おふくろはさっさと煮物にするだろうな。
はなうたを歌いながら、楽しそうに。

フライヤーズ時代 おふくろと。
そばにあるのは親父の外車。
50年も前に、シャレテタナア。

八名という名前は珍しくて、うちの八名家も、
子孫が絶えそうになっていた岡山の八名家へ、曾祖父か誰かが養子に入ったと聞いている。
愛知県の八名郡八名村と、どういう関係があったのか?
先祖がそこの出身だったのか?
色々なことを考えてしまう。
おふくろは二十歳そこそこで八名家に嫁ぎ、戦争も、岡山の空襲もくぐり抜け、
30代で夫(俺の親父)を亡くしてから50年以上も
八名家を毅然として守って来た人だから、
『八名丸くん』を食べさせてやりたかった。
「おふくろは、悪役が嫌いだったんだよなあ。でも、悪役の方が難しいんだぞ」
なんて話しながら。ははは。

※八名丸くんは、平成14年愛知県の伝統野菜に選ばれている。
JA愛知東 一鍬田地区(旧八名郡八名村)の名産品

JA愛知東 http://www.ja-aichihigashi.com/

※東栄町へ講演に行った時は、教育長さんや皆さんが親切で、
豊橋駅から町へ迎かう途中、
『八名中学校』と『八名温泉』という名前のある所を回って下さった。
『八名』という地名があったんだなと、感激した。


※「八名丸くん」の写真は、JA愛知東様からお借りしました。

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