八名信夫の うまいもん紀行


わらびもち
(岡山 花かまくら)

小中高と、ズーッと一緒だったD君が、
岡山に帰って、久しぶりに会ったら、
突然「八名君、わらびもち、好きか?」と尋ねるから、
「おお、好きじゃ。ワシは、わらびもちが好きなんじゃ」
「そうかア。うちの近所に、ウメエわらびもちがあるんじゃ。
 明日、どうだ?」
「エエヨ」
「これが、昔からある店でな。ウメエんじゃ。
 そして、昔は竹の皮に包んで売ってた。
 それを、役所が、竹の皮なんか衛生上良くない。箱にしろって、
 なんとまあ、訳の分からんことを言うもんじゃ。なあ?」
「ほうかあ。風情のねえことを言うもんじゃなあ」
「なあ? あれは、竹の皮だから良いのになあ?」

そして、D君、大きな箱に入ったわらびもちを買って来てくれた。

「このナア、わらびがよそと違うんじゃ」
箱を開けると、たっぷりのきな粉に、大きなわらびもちが
びっしり入っている。
一口では食べられないような大きなわらびもちだ。
うまい!
口にいれた途端に、わらびもちが違う!
ふわっととろけるような、
それでいて深い味わい。
それにきな粉がうまーくなじんで。
岡山に、こんなにおいしいわらびもちがあったとは!

D君とは、小学校から中高と一緒。
空襲にもあった。焼けあとの小学校で、一緒に野球もやった。
D君は、ふるさと岡山の為に役所で一生懸命働いた。
俺はプロ野球から俳優になった。
「おメエが元気で、こうやって一緒にメシを食えるのが
 最高じゃなあ」などと笑い合ったりしている。
「又、このわらびもち、頼むぞ」
「ええよ」
幼ともだちは、ええなあ。


花かまくら 津高店
〒701-1145 岡山市北区横井上209
086-294-1133


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