八名信夫の うまいもん紀行


ポクッ ネチャッ が好きなんだ。
虎屋のういろ(伊勢)、たけだのゆべし(山形県東根)

なんでか分からないけど、俺は、アノ“ポクッ、ネチャッ”という感じが好きなんだ。
味はごく自然。噛むと“ポクッ、ネチャッ”という。
昔ながらのおやつ、なのかなあ? ああいう餅が好きなんだ。

今年1月。初めて中部国際空港へ行った時、【虎屋のういろ】に出会った。
たくさん店が並んでいる中、何故か足が止まったのだ。
ちょっと懐かしい感じの店構えで、ケースに色とりどりの細長い餅が並んでいる。
【ういろ】と書いてあるが、俺たちがよく知っている
あの真空パックに入ったういろではない。
店の奥でつくった“つくりたて”を、並べて売っている。

え? あれが【ういろ】? 確かに、白・抹茶色・ピンク・焦茶色
ういろの色が並んでいる。色もケバケバしくない。
どこか自然の色合だ。うまそうだなあ。
みんな、行列で買い求めている。
俺は白ういろが好きだから、白を3本と抹茶を1本、桜色を1本買ってみた。
薄皮に1本1本並べてくれる。
「このういろは、つくりたてです。生菓子なので、あさってまでには召し上がって下さい」
そうか、あさってナ。そう思っている間もなく、近くの店でまず1本。
白ういろを、切らずに食べてみた。
うまい! つくりたては、こんなにうまいのか!
ははは。結局、5本の【ういろ】は、その日のうちになくなった。

この“つくりたてのういろ”、実は伊勢のおはらい町にある
【虎屋のういろ】だということが、分かった。
伊勢の家庭でつくられていたういろを、大正12年、
【虎屋】の初代のご主人がよりおいしく、いろどりにも季節を取り入れて、
伊勢参りのお土産にとつくったのだそうだ。

【虎屋のういろ】つくりたてをポクっと食べると、
伊勢のお母さんやおばあちゃんが、子供たちにつくってくれた
【ういろ】は、こうだったんだナアと、分かる気がする。

今度は、伊勢神宮へゆっくりお参りでもして、
【虎屋本店】でういろを食べてみたいなあ。
心も身もきよめて、ありがたい気持ちでいただく【虎屋のういろ】…
おっと、俺はまだまだ悪役! 悪役50年のこれぞという仕事をやりとげてから。
お伊勢参りも、おはらい町の【虎屋のういろ】も、まだ先のことだ。

一方【ゆべし】というのは。
今から14年前位かな?
『裸の大将』に出演。山形県東根市で1週間位ロケをしたことがあった。
俺は地元悪徳業者社長。可愛い娘が飯島愛君。
その悪徳社長と山下清さんが、どういう関係だったのか?
それは余り覚えていないが、
ともかく、この東根の皆さんが親切で! ロケに一生懸命協力して下さった。
悪徳業者社長に外車を貸して下さった『男寿し』の社長。
さくらんぼ農園をやっている社長。
そして、撮影場所として店や家を提供して下さった武田さんご夫妻。
この武田さんの店で、初めて【ゆべし】に出会ったのだった。

【ゆべし】も、ポクッ、ネチャ。素朴な、懐かしい餅の味がする。
山形東根に昔から伝わっているお菓子で、米の粉からつくられているそうだ。
ロケでお世話になった武田さん手作りの【ゆべし】は、
昔ながらの味にこだわって、職人気質でつくり続けている。
このポクッ、ネチャに、がんこおやじの気合いがこもっている。
甘過ぎず、堅すぎず、噛む度に心がほっとするような。
こういう味が、やっぱり好きだなあ。

※『たけだのゆべしや』さんは、
昭和30年 創業 ゆべしを発売
昭和59年 【たけだのゆべし】を発売 第20回全国菓子大博金賞受賞
平成元年 【風祭つり】 (ゆべしを紫蘇の葉でつつんだ)が
第21回全国菓子大博金賞受賞

『がんこおやじの五色ゆべし』は、くるみ・ごま・抹茶・唐辛子・さくらんぼ味がある。

虎屋ういろ
〒516-0072 三重県伊勢市宮後2-2-8
0596-23-5005
http://www.torayauiro.co.jp/

たけだのゆべしや
〒999-3701 山形県東根市大字東根甲9266-334
0237-42-0680


※ういろの写真(2枚目)は虎屋ういろ様のサイトから、許可を得て転載致しました。

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