八名信夫の うまいもん紀行


オヤジさんに教わったこと
佐賀県鳥栖市 とすのとんかつきむら本店

30年前からの熱烈なファンがいて。
このオヤジさんが又、竹を割ったような性格。
八名信夫を応援する!と決めたら、まっしぐらに応援してくれた。
その代わり、下手なことは出来ない。
ちょっと気を許すと、
「悪役が主役にこびた芝居をしてどうする!
主役さん、監督さん、また使って下さいと、そういう目がどっかにある」
と、電話がかかって来る。

佐賀県は鳥栖の公門さん。
鳥栖で「とんかつのきむら」と言えば、知らない人のない店だ。

屋根に飛行機が止まっている。
店の敷地に、SLが走っている。
クラシックカーが、何台も飾ってある。
とんかつが、SLで運ばれて来る。
それが、とんかつきむら本店だ。

普通のとんかつの店のオヤジさんだが、有名人だ。

家族で来て、家族みんなが楽しめる店。
とんかつは、安くてうまい。量も多い。

なにしろ、とんかつがSLに乗ってレールを走って来る。
子供もおじいちゃんもおばあちゃんも
若い仲間たちも、大ウケ。
おまけに、大人が食べ終わって、ゆっくり話をしている時
「子供さんたち、SLに乗せてあげる」と、
このオヤジさん、自分でSLを走らせて、子供たちを喜ばせる。

どうやったら、お客様が喜ぶか?
どうやったら、楽しんでもらえるか?
そればかりを考えて、一生終わったオヤジさんだ。

悪役商会が、熊本八千代座で舞台をやった時、
毎日、100人ずつバスを仕立てて、応援に来てくれた。
とんかつとコロッケを100人分ずつ、差し入れしてくれた。

ある日、このオヤジさん、透析を始めた。
腎臓が悪かったそうだ。
「週に2日も3日も透析に通うのが辛い」と言いながら、
それでも、俺たちの舞台のことを気にかけてくれた。
夫婦で、福岡の俺の講演に来てくれて、
その何日かあと、
家に、近所の仲間たちを部屋いっぱいに呼んで、
ご馳走とカラオケでご機嫌。
奥さんが店から帰ったら、
「かあさん、かあさん」と、隣に座らせて離さない。
「かあさんの為に唄うから」と、みんなに冷やかされて。
にこにこ笑いながら、寝室に入った。
そして、翌朝、奥さんが起こしに行ったら
亡くなっていた。

オヤジさんらしい幕引きだった。
今でも「八名さん!この前のテレビね」と
旅先にヒョコッと現れそうだ。

※店は、もうすぐ40年になるそうだ。
オヤジさんの気持ちは、奥さんや店のみなさんに
お客様に、しっかり伝わっているんだナア。

とすのとんかつきむら本店
〒841-0055 佐賀県鳥栖市養父町482-1
0942-83-2369
http://www.kumin.ne.jp/sprit/homepage.htm(音が出ます)


※写真は、とすのとんかつきむら本店様のサイトから、許可を得て転載致しました。

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