八名信夫の うまいもん紀行


ぼっけえ うめえ お好み焼き
〜本とん平(岡山市)

子供の頃、岡山に「一銭やき」というおやつがあった。
小麦粉に味をつけて、薄く焼いたものなんだと思うけど。
それがおいしくて!
今でも「一銭やき」と聞くと、懐かしくなる。
その「一銭やき」に似た、最高にうまいお好み焼きが岡山にある。

岡山市磨屋町の【本とん平】。
ここのお好み焼きは、初めて食べたら、新鮮!
こんなにおいしいお好み焼きがあったのか?とやみつきになる。
【本とん平】の《ねぎ焼き》。これがうまい!
俺が、鉄板の前に座ると、弟さんは黙って生地を薄めに焼き始める。
もう20年近くも通っていると、俺が今、何を食いたいか、顔を見ただけで分かるらしい。
「久しぶりね。今日、若い衆は?」
オーナーのおねえさん(山科美智子さん)が奥から、声を掛ける。
「おねえさんも、変わらんのう。ボッケエ若けえ」
などと、いつのまにか岡山弁で会話が飛びかう。
大体が岡山弁は、声が大きい。
一年中 晴れの日が多く、食物も豊富。自然も豊か…
そういう岡山だから、気持ちがおおらか、元気が良い人が多いのかも知れない。
【本とん平】は、そういう勢いのあるお客様が多い。
おねえさんが明るいから、カナ?

鉄板の上では、細いネギを細かく刻んで、
生地にたっぷりのせる。
そして、くるっと巻いて、包丁で切れ目を2つ3つ。
さっと皿にのせる。
あっさりとして、ねぎもシャキッと。最高にうまい!
【本とん平】のねぎ焼き。
こんなにうまいお好み焼きがあるのかと、みんな感激する。

【とん平焼き】も良い。
やっぱり薄い生地に、豚肉と卵焼きをくるっと巻いて、タレをつける。
言ってるだけで、口の中に、あのうまさが広がって来る。
それほどうまい!
オムソバも、お好み焼きも、よそとは違って、
生地は薄めに程よく、野菜や麺、具もたっぷりのせて。
ひとつひとつ、おねえさんと弟さんが、何十年もかけて作り出した
【本とん平】のお好み焼きだ。

お好み焼きは、ふるさとの味。仲間たちの味だ。
家族だったり、会社の仲間、学校の同級生、運動部の先輩後輩
恋人のデートにも良い。
鉄板のジュージューいう音を聴きながら、
腹をすかして、皆で箸をつつく。
寂しい人も、気持ちがちょっと尖んがっている人も
【本とん平】でお好み焼きを食ったら、ほっとする。

一人だけで沈んでいたり、うっかり行儀の悪いことをしたら、
おねえさんは見逃さないぞ。
「食物のお皿に、吸い殻を入れないで下さい!」
「酔うのは良いけれど、他のお客様も楽しくなるような酔い方をしましょうね」
ピシッと、お目玉を食らう。

そういうおねえさんが好きだから、みんなが通うんだ。
おねえさんが厳しくなくなったら、却って心配だ。

俺も、ねぎ焼きととん平焼き、オムソバにお好み焼き
ぺロッと食べられなくなったら?
そんな心配はいらないな。ははは。

本とん平
〒700-0826 岡山市磨屋町4-21
086-231-1859


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