八名信夫の うまいもん紀行


光に魅せられて
(ハウステンボス)


(C)ハウステンボス/J−11352

その“光”に出会ったのは、12月の【ハウステンボス】だった。
JR福岡駅から特急で1時間40分。
駅を降りた瞬間から、おとぎの国が始まった。
(4〜5年前の初めての体験)
「参ったゾ。ここは、俺たち大人の男が来るところか?」
正直、ちょっと照れながら、ハウステンボスの正面入り口をくぐったのだった。

そこにあったのは、あふれるばかりに美しい光の国!
一面の花畑。風車、オランダの風景の中に、
光がのどかに遊んでいる。
運河には、丸い光が幾つも浮かんでいる。
「この川に光を浮かべたのは、私たちの自慢です」
ハウステンボスの光の演出家自らが、案内して下さった。
光というのは、電源から取る筈だから、水の中に入れるには?
などと考えてしまう俺は、古いのか…?
と悩み(?)ながら、光に彩られた帆船、広場、
クリスマスツリー、そして、中心の広場へ。
と、その時、合図と共に、お客様の代表が点灯式を!

目の前に浮かび上がったチャペルの美しさに、思わず声をあげた。
まるで何千何万もの宝石たちが、光輝いているようだ。
優しい音楽が流れて、チャペルに天使たちが現われ、キリスト生誕を祝う。
広場のお客様と一緒に、俺もそのミニミュージカルを楽しんでいた。

「今年は、どういう光で、お客様に楽しんでいただこうかと、
私たちは、一年がかりで考えて、ひとつひとつ、手作りで光を飾るんです。
そして、思った通りの光の国が出来たら、最高に嬉しいです!」
と、光の魔術師氏。

チャペルから、オランダ女王陛下の宮殿を再現した“パレス ハウステンボス”へ。
「おとぎの国は、俺たち大人の男には…」などと思っていたこの俺が
すっかり幸せな気持ちになって、光の街を堪能している。

「ハウステンボスは、ある一人の男から始まったのです。
その人は“ここにオランダを創って、みんなに楽しんで貰うんだ”
そう言って、たった一人で夢の実現に向かいました。
しかし、余りに膨大な構想で、彼一人ではどうにもならず…
でも、何とか彼の夢を実現しよう!と、沢山の人たちが力を合わせて、
今日のハウステンボスに造り上げたのです」と広報のY氏。
「本物の夢の国を創るのだから、本物の緑、花畑、運河、水も風も
本物にしよう!と、担当の一人一人が丁寧に仕事をしています」

俺は、ハウステンボスを創っている人たちに会って、話して、
彼らのファンになってしまった。
広い敷地の緑や木々を育てている若い人たち、
花壇の何万本もの花々を見守っている人たちも、
「お客様がいらした時、枯れたり弱った花や樹があったら、
がっかりされますから。
どこの花はどうか?どの樹は?と、いつも観ています」と、
樹や花が自分の分身のように、愛情を持って話している。
ホテルの皆さんも、ショップ、広報一人一人が
「お客様が、又来ようと思って下さるように」と、胸を張って、
目を輝かせて【ハウステンボス】について話している。
このあたたかさが、ハウステンボスなんだなあと、俺は感激していた。

今年は、宮殿の後庭の光が素晴らしいと評判だ。
18世紀オランダで設計されながらも実現されなかった“幻の庭”。
ハウステンボスが再現したその後庭に、
光の噴水、光の回廊、シャンパンツリー、
光のショーと、光があふれているそうだ。
是非観に来てくださいと手紙が届いた。

大体が、俺たち悪役は光に縁がない。
照明さんから強い光(キーライト)を当てて貰えるのは、主役だけ。
俺たちは、暗闇や影の中にいる。
良い主役は、「八名、俺のライトを取れ」と言って、
一瞬、光を譲ってくれる。
強い光を当てられて、悪の親分の俺が、大きく描かれる。
それを、主役がバサーッと切り倒す!
主役は、光を浴びて、格好良く映る。
殺された俺は「ああ、しっかり仕事をした。主役をきちんと引き立てた」
と、満足に思うのである。
若山富三郎さんは、主役の光を譲ってくれた。
もう、あんな主役はいなくなったナア。
と、ハウステンボスの“光”からそれてしまったが。

☆ハウステンボス、今年は【光の街〜新・光の宮殿】2月27日迄
…光に包まれて、ゆっくり過ごすのも良いナア。

ハウステンボス http://www.huistenbosch.co.jp/


※光の船、光のチャペル、パレスハウステンボスの写真は、ハウステンボス様からお借りしました。

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