八名信夫の うまいもん紀行


朝市の食堂
味の一番 (北海道 函館)

昭和58年に「悪役商会」を結成して、
「今迄やったことのない仕事もチャレンジしてみよう」と
テレビの旅番組のレポーターもやった。
そのうちに「八名信夫は、どうやら予習復習が苦手らしい。
作家が台本を書いて用意するより、ぶっつけ本番、自由に踊らせた方が面白い番組になる」
と、プロデューサー氏が思ったのかな?
「ハイ、これが町で出している資料です」ポンと、1〜2枚のチラシやしおりを渡されて。
それで撮影が始まることが多くなった。

【土曜スペシャル〜朝市】は、そうやって始まった。(テレビ東京系列)
今から24〜5年前。本当に台本もなければ、こうしろああしろの注文もない。
「明日、朝市に行って、八名さんの好きなように動いて下さい。
カメラと音声はついて行きますから」
北海道から九州鹿児島迄、朝市を訪ねた。楽しかった!
あの頃の制作スタッフは大人だったなあ。
何にもしていないふりをして、実は俺を動かしていたんだからな。
だから、俺のところはいつも視聴率が良くて、
朝市のレポートはどんどん増えていった。

そんな朝市の中でも、俺が一番気にいったのが、北海道函館の朝市。
特に、お母さんたちが最高だった。
「ああ、八名さん八名さん! これ食べていきなさい」
「なにしに来たの?」
「テレビで観るより若いんでないかい?
 青汁飲んでると、肌もつやつやになるんだべさ」
どっと笑い声があがる。

早朝に家の畑から採って来た野菜や花を並べているおかあさん。
自分でつくった餅やのりまき、おはぎを売っているおかあさんたちもいる。
「べこ餅」もうまかった! 餅米の粉をねって、木の葉のような形にした餅。
笹や薄皮にのっている。北海道の家庭のてづくりのごちそうだ。
70〜80歳のお母さんたち。朝市ベテランのお母さんたちの顔を見なければ
一日が始まらないというお客さんも大勢いる。

それから朝市に欠かせないのが、食堂だ。
パッと見て「ここだ!」と決めたのが【味の一番】。
そして、俺の勘は的中した。

まずラーメン。
函館は塩ラーメンが名物だそうだ。
しかも北海道に来て、ラーメンを食べなければ、やっばり物足りない。
塩と正油、味噌。スタッフと手分けして食べてみた。
うまい! 昔ながらのうまいラーメンの味がする。

『ホタテラーメン』(ホタテ3ケ いか足 ワカメ ふのり ねぎ チャーシュー)
『北海ラーメン』(塩ラーメンにコーン バター アスパラ ねぎ メンマ ポテトチャーシュー)
と豪華なメニューもある。
「八名さん、うちのハラスも食べてみて」
と、ご主人の日下さん。ハラスというのは、鮭の一番うまい所だ。
「ホタテも、うちのは貝から外してバターで焼くんです。うまいよ」
聞いてるだけで、よだれが出て来る。当然食べた。

日下さんは、函館の朝市が好きで、
朝市を、全国からいらして下さるお客様に、もっと好きになって貰えるようにと、
朝市の仲間たちと、町づくりに頑張っている。

「全国から わざわざ訪ねて下さるお客様です。いつも一番おいしい函館を
ごちそうしなければ。そう思うんです」と日下さん。
「それが、朝市に25年以上も店を開かせて貰っているお礼の気持ちですよ」
【味の一番】に家族連れで15年も通い続けていて、
とうとう函館に土地と家を買ってしまった家族もいるそうだ。

「冬は、海のそばだから、潮風が痛い位に厳しい。寒いなんてもんじゃない。
でも、シバレレばシバレルほど、魚がうまい。ラーメンも鮭のハラス定食もうまいんです。
朝市で一生懸命働いて、手も足もカジカンデ(こごえて)
“めしめし”って入って来る仲間たちが、食べ終わって、良い顔をしてくれる。
そういう時、この仕事をやってて良かったナと思うんですよね」日下さん。

なかなか函館へ行けない俺の為に、「函館のうまいものです」と、
ラーメン、鮭(ちゃんと切り身にして)(この前の時鮭はうまかった!)
いくらの味付け、ほたて、ケーキ(迄)届けてくれる。
忘れないで、気にかけて下さる、この思いやり!
だから、函館が好きなんだ。

味の一番
〒040-0063 函館市若松町11-13
0138-26-5587


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